揺れ日記

熊本地震で被災。行政からも何の支援も無く一人で自費で県外避難転居しました。

読みました:「夫のちんぽが入らない」

とうとう、この日が来た。

昨年3月、書籍化するという話を聞いてからずっと待ちわびていた本が

いよいよ発売となった。

こだまさんの「夫のちんぽが入らない」である。

ブログ、同人誌のなし水、ペンネの日記、塩で揉む、森のヤマンバ姉。

重いテーマなのにどこかカラッとしていて笑っちゃいけないんだけど笑ってしまう文章にしてしまう、そんな不思議な才能の持ち主のこだまさん。

 

20年一緒にいる夫と性交渉ができない、という内容なのだが、もしも入ってしまっていたら?それより稲妻荘に住まなかったら?

この作品は世に出なかったということである。

これを書くために出会った、いややっぱり前世で兄弟だったんだろうな、ceroの曲になるくらいだから、出会うべくして出会った二人なんだなと思いつつ読み進める。

 

私とこだまさんは年齢も近く、生まれ育った環境も、子供の頃に悩んでいたことなどが似ている。

私も信号も店も無い、猪が頻繁に出没し鍋で食らう山奥の集落で育った。

ブログ中で自分のことを「土人」と表現されていたが、それなら私も「土人」だ。土人さなら負けていない。

誰かの噂話しか楽しみがない、あそこは夜遅くまで明かりが点いていた、なにをしていたのだろうか、とかプライベートなんて皆無な集落。
いつしか人と関わることが苦手になり、居場所を見つけられずにいて息苦しい毎日。

早くここを出たい、一人になりたい。子供の頃の私はいつもそう思っていて、夏でも冬でも毎晩夜になるとこっそり家を出て田んぼのあぜ道で星空を眺めていた。

両親の仲はとても悪く、父から暴力、母からは今でいうネグレクトを受けるというダブルパンチの環境で、中学から離れて暮らしていたのもあり将来とか結婚や子供や愛情、何の希望も無かった。

こだまさんは学校で「人はなぜ結婚するのか」という質問に「わからない」と答えてしまう。

実は私も同じ経験をしており、同志を得たようななんだかうれしいようなそんな感覚になる。

 

彼との生活を経て、こだまさんは「入らない」まま彼と結婚する。

彼のやさしさと人柄が詳しく書いてある。今まであまりそこに触れていなかったから

なぜ結婚したんだー!って思っていたから。

ジョンソンベビーオイルを使ってなんとか掘削に挑むさまも痛々しくて本当なら目をそらしたいけれど、なぜか笑ってしまうのだ。

「なし水」でも登場していたこのシーン、ドラッグストアで見かけるたびに思い出してしまうのだ。「ジョンソン革命」と。

 

 

周りからはすべてが順調だったように見えていたことだろう。

インターネットが普及する前のことで調べようにも調べられず、若い二人はどうしたら

良いかどれだけ悩んだことだろう。

夢にまで出てくるくらいだから。

でもどうして世間は結婚したらしつこく「子供は?」って聞くのだろう。

二人で生きていく、と決めた夫婦もいるのに。

 

 

こだまさんは教師として頑張っていたけれども、学級崩壊という大変で心身ともに疲弊しきってしまう。わたしだったらすぐ投げ出してしまうだろうが、こだまさんはぎりぎりまで頑張ってしまう。誰にも、夫ですら相談できずに。

 

私も、仕事のストレスと過労で突発性難聴夢遊病、不眠、拒食といろんなことがあった。

そしてとうとう癌が見つかり手術したものの「出産は無理ですね」と3つの産婦人科から同じことを言われてしまう体になった。付き合っていた人との結婚話が流れ、このことが原因でうまく男性と付き合えなくなり、だからいまだに独身である。

職種が違うからアレだけれども、「心が追い付かなかった」あの辛さはわかる。

 

退職し穏やかな日が戻ってきたけれども、今度は私も良く知る難しい病気になってしまう。なんということだ。

そんな中、かつての教え子「ミユキ」が頼ってくる。

ここで「できることがあるのなら真っ先に手をあげたかった」「困ったときはいつでも頼って欲しい」という一文であることを思い出してはらはらと涙があふれる。

私は熊本地震で被災し、避難所などでの不自由な生活の中、誰にも頼らず自腹で、一人で、県外転居に踏み切った。

その際にある男性と出会い付き合うことになったが、のちに彼の借金事情が判明。私がお金を出さなくてはならず、転居先での仕事も決まってないし正直生活していけるか不安な毎日を送っていた。

そんな時にこだまさんから「何かしてあげる事はないか」などの熱いメッセージが届く。

遠く離れた、こんな私にこんな温かい言葉をかけてくれるなんて、と。

その後、彼と別れる事になった時もまた、温かい言葉のおかげで勇気を取り戻せたのだ。

続きを読むとこだまさんの夫もまた、生徒指導のために奔走し、とうとうパニック障害になってしまう。そんな夫を支えていくこだまさん。

 

そして徐々に「入らなくてもいい」と性を網走監獄に置き、徐々に解放されていく様がまたこだまさんらしくていい。

40歳を目前にし、もう子供子供と言われないかと思いきや、突如ジャガー横田が横入りしてきたりと大変だけども、ありのまま生きていけばいい。

誰でもは出来ない経験をたくさんしてきた。

それでいいじゃないか、という思いになりながら終わる。

 

昨年この本をこのタイトルのまま出版する、と聞いて大丈夫かと思ったけれども、でもこのタイトル以外思い浮かばなかったし、これじゃないと出す意味ないな、とも思った。

いま、この本を手にし、読む事が出来てとても嬉しい。

こだまさんは子供を産めなくても、入らなくても、ぼんぼん作品を産み出しているので、私はこれからもいっぱい読みたい。

 

こだまさんと初めてお会いした時、とてもまじめで清楚でキュッとした、芯が強いけれど顔も雰囲気もかわいらしい人だなあ、とても「ちんぽ」と書きそうにない…と思いつつ少しお話をした事を被災後の辛い避難生活の時に思い出していた。

またお会い出来るのを楽しみにしています。